不安を抱えつつ育休を取得!営業管理職の男性社員に起きた変化
「来月は、佐野さんと会えなくなるんですね…」
「いや、俺退職するわけじゃないから!」
部署のメンバーが開催してくれた激励会の場で、あまりにも不安そうな顔をした後輩にすかさずツッコミを入れた。東京本社の営業メンバーが集まって激励会を開いてくれた理由は、私が翌月から育休を1ヵ月取得するからだ。
みなさん、こんにちは、佐野です。
私はもともと、本社営業部で部長をしていましたが、2023年4月から大阪に転勤となり、現在は関西支社の支社長を務めています。プライベートでは妻と2人の娘たちに囲まれて暮らしており、妻は東京、私は静岡出身ですが、大阪で暮らしている影響で娘は最近、関西弁でツッコミを入れるようになりました。
まだ東京本社で働いており、第二子が誕生する際に、私は部署メンバーから熱烈な激励を受けながら育休を1ヵ月ほど取得しました。
男性の育休に関する法改正がされてから約2年。「男性育休」「パパ育休」という言葉はよく耳にするようになってきましたが、仕事の引き継ぎや復帰後のことなど、さまざまな不安がつきまとい、取得に踏み切れない人は多いのではないでしょうか。
実際に私も、管理職という立場であることもあり、自分が育休を取得する前は不安な部分も少しありました。しかし、その不安はいい意味で裏切られ、育休を取得したからこそわかったことが2つあります。それは、「育休はネガティブではなく、家庭にも組織にもポジティブな影響を与える」ことと、「管理職こそ、一歩を踏み出して育休を取得するべき」ということです。
今回は、育休を取得したことでなぜ私が上記の感想を持ったのか、みなさんにお伝えしたいと思います。
初めての育休取得、拭いきれない不安
「佐野くん、育休取得しないの?」
育休を取得する決意をしたきっかけは、役員からのこの一言と、ファミリーエクスペリエンス制度という男性育休を後押しする制度がCHINTAIに新しく導入されたことでした。
ファミリーエクスペリエンス制度とは、男性社員もしくは女性社員の夫(パパ)が一定期間の育休を取得した際に会社から補助金が支給される制度で、家族との時間や体験をより豊かにしてほしいという想いから制定されています。CHINTAI社員が女性で、その夫(パパ)がCHINTAI社員ではない場合も活用できるという点が一番の特徴です。
私に声をかけてくれた役員も、ファミリーエクスペリエンス制度を活用して育休を取得することを強く勧めてくれました。第一子が生まれた際は、部長に昇格してすぐのことだったので、自分の意思で育休を取得しませんでした。しかし、第二子が生まれたタイミングでは部長としての業務にも慣れていたため、制度の導入と役員の後押しをきっかけに、人生初となる育休を取得することに決めました。
育休を取得する旨を社内に伝えた際、「部署外」と「部署内」という2つの反応に分かれたのが印象的でした。「部署外」のメンバーはポジティブな反応ばかりで、多くの人に背中を押していただきました。一方で「部署内」に関しては、ポジティブに送り出してくれている中にも、少しだけ不安が見え隠れしていました。
普段から後輩たちの営業に同行したり、定期的に相談を受けたりすることが多かったため、1ヵ月間それがなくなることが彼らにとって不安だったのだと思います。私自身も後輩のメンタル面を心配していましたが、「営業組織として新規契約や解約を防止する力が弱まるのではないか」という点についても不安を抱えていました。
組織やメンバーを信用しているものの、売上を伸ばし続けることが求められる営業という仕事をしている以上、自分が1ヵ月も不在になることで、組織全体の営業力が衰えてしまうのではないかと危惧していたのです。
この不安に関しては、すぐに解決することは難しいと感じていたので、育休に入る前に後輩の不安を少しでも軽減したくて、「何か心配なことがあったらいつでも連絡していいから」と声をかけました。
また、半期ごとに実施される社内評価に影響が出るのではないかという点も、不安に感じていました。営業の仕事をしている以上、1ヵ月間活動できなければ、成績にも大きく影響が出てしまいます。これはおそらく、男女関係なく感じることだと思います。
しかし、人事に相談してみると、CHINTAIでは育休中の期間を考慮して半期の評価を実施してくれることがわかり、評価に関する心配は簡単に解消されました。もし、業務上の評価などが気になって育休取得のハードルになっている場合は、一度人事に相談してみてください。意外と簡単に不安が解消されることもあるので、ぜひ試してみてほしいです。
育休を取得したことで訪れた、たくさんのいい変化
少しばかりの心配がありつつも迎えた育休。期間中は家族と過ごす時間が増えただけでなく、コミュニケーションを取る機会が以前より増え、子どもが考えていることや妻が育児のどんな部分を大変だと感じているのかなどが少しだけわかるようになりました。
そして、育休期間中の1ヵ月間で家庭にさまざまな変化が起きました。育休を取得するメリットが具体的にイメージできないという人はぜひ、以下の変化をご覧ください。
長女と過ごす時間の変化
妻が第二子出産に際して入院していたため、当時1歳9ヵ月の長女と二人で過ごす時間が自然と増えました。その際、長女がおしゃぶりを卒業できたことが本当にうれしくて、妻が元気な時に報告したほどです(笑)。また、今でも長女から一緒にお風呂に入りたいと言ってもらえるので、二人きりの時間が増えたことで長女との絆が深まったと感じています。
他にも、育休を取得して家族に時間をすべて使えることで「記念写真を撮ろう」とか「外が晴れているからちょっとみんなで出掛けよう」という日常+αのことができて、思い出づくりはもちろん、子どもにもさまざまな経験をさせてあげることができたのでよかったです。
育休期間で、自分の時間をすべて子どもたちに使えるからこそ、長女と過ごす時間に大きな変化が訪れ、結果的にその時間のおかげで家族の絆も深めることができたと思っています。
育児に対しての意識の変化
次女が生まれたての頃は、3時間置きに授乳やミルクをあげる必要があり、その度に長女も私たちと一緒に起きしまい、2人が一斉に泣き出してしまうということがありました。正直この頃は、「本当に大変だった!」という感想しかありません(笑)。
しかし、妻だけでなく自分も育休中で育児に集中できる状態だったので、夜中に長女が起きてしまわないように寝る部屋を分けることに。長女は自分が見て、次女は妻が見るという分担をして、妻と2人で大変さを分かち合いながら乗り越えることができました。これがもし、自分が休みを取らずに妻一人にお願いしていたら…と想像すると、その大変さにゾッとします。
また、自分自身気がついていなかったのですが、育休前は仕事で遅くなるとき、妻に対して「(仕事が遅くなって育児できなくて)ごめん」と言っていたそうです。しかし、育休を経て仕事に復帰してからは、「(育児をしてくれて)ありがとう」というポジティブな言葉に変わったそうです。
意図的にかける言葉を変えたわけではないのですが、おそらく育休前は「育児=大変・きつい」という印象が強かったので、「ごめん」というネガティブな言葉を使っていたのだと思います。
しかし、子どもと過ごす時間や妻と一緒に子育てする時間が増えたことで、「子育て=大変だけど楽しい」というふうに育児への意識が変化したことで、結果的に「ありがとう」という伝え方に自然と変わった気がします。
妻にとって、以前私が言っていた「ごめん」は「子どもの子育て=いやなこと」と捉えられているように聞こえて気になっていたそうです。それが「ありがとう」に変わったので、「うれしい」と喜んでもらえてよかったです。
義実家との関り方の変化
育休取得前は、育児をほとんど妻に任せてしまっていましたが、育休中に妻と分担して育児を行うことで、子どもの成長や育児に対してのさまざまな疑問や悩みが出てくるようになりました。その際、義母に相談して悩みを聞いてもらったり、育児の話をしたりなど、以前よりも育児トークをする機会が増えました。
育休前は何がわからないのかわからない状態だったため、悩み相談もできませんでしたが、育児にしっかり向き合う時間が取れたことで、育児に対する理解度や解像度が上がり、新しい形でのコミュニケーションが取れるようになったのだと思います。
このように、佐野家内(私と妻と子どもたち)での関係性がよくなったことはもちろん、義実家との関係性もいい方向に変化したのは、とてもよかったと感じています。
誰が休んでも、仕事は意外とまわるし、組織も状況に適応した形へ変化する
日々成長する子どもと過ごす時間や、普段はとりづらかった夫婦の時間を楽しんでいると、あっという間に1ヵ月の育休期間が終わりました。
育休前に「何かあれば連絡していいよ」と伝えていた後輩たちからは、最初の数日以外は特に連絡がありませんでした。後輩たちから連絡がほとんどなかったということは、特に問題がなかったということだと思ったのですが、少し心配でドキドキしながら出社したというのが本音です(笑)。
しかし、私の心配は全く必要なかったと復帰後にすぐわかりました。管理職である自分が1ヵ月間も休むことで、組織が衰退してしまうのではないかと心配していたのですが、なんと組織の力は大幅に向上していたのです。
ある後輩は、私がいない間に自ら大手の商談に行き、私が育休明けに同行した際には、その後輩と先方が非常に親しい関係になっていました。その光景を見ただけでも、その後輩がこの1ヵ月間にどれだけ頑張ってきたのかがわかりました。
また、その後輩に限らず全員が以前よりも自立し、自分で考えて行動する組織へと変化していました。正直、あまりの変化に「この1ヵ月で何があったんだ!?」と思わずにはいられませんでした(笑)。
後輩に後で話を聞くと、私がいないからこそ、今まで私に頼っていたことを自分で考えて行動しようと各々が意識して業務に取り組んでいたようです。私がいなかったからこそ生まれた組織の変化は全く予想外で、非常に驚きました。
この時、「誰が休んでも、仕事は意外とまわるし、組織はその状況に適応した形へと変化するんだ」と強く実感しました。育休前に感じていた、組織の力が衰退するのではないかということは、全く悩む必要がなかったのです。
また後輩以外でも、育休から復帰後に、社内での子育てトークが非常に増えるという変化もありました。これまでパパ・ママ社員と育児などについて話す機会はあまりなかったのですが、今では多くの人と子育てについて話す機会が増えています。「佐野が育休を取った」という事実が、このような社内での変化に繋がったのではないかと思っています。
育休に対する不安から一歩踏み出すことが、変化への第一歩
男性育休は、ネガティブなものではなく、家庭にも組織にもポジティブな変化をもたらしてくれる。
私は、育休の取得を悩んでいる多くの男性にこの事実を伝えたいです。世の中では「たった1ヵ月の育休では何も変わらない」という人もいるかもしれませんが、その1ヵ月をどう使うかは自分次第だと思います。
現に私は、1ヵ月の育休で家庭にも組織にも良い影響がありました。どれだけ短かったとしても、取らないという選択肢をするよりは、何かしらの気づきや変化が必ずあるはずです。
男性育休を取得することを悩んでいる方や、もうすぐ自分が育休取得の対象になる方は、最初に感じる少しの不安から一歩を踏み出してみてください。その一歩が、家庭にも仕事にもポジティブな変化をもたらしてくれるはずだと私は思います。
※社員の所属および記事の内容などは2024年5 月現在のものです。